『入浴福祉新聞 第127号』(平成26(2014)年1月1日発行)より
過去の入浴福祉新聞に掲載された記事をご紹介します。
発行当時の入浴や福祉等の状況を少しでもお届けできたら幸いです。
高橋ドクターのちょっと豆知識 医療法人千甫会高橋外科医院副院長 高橋 亨
■血液の濃縮と血液粘度■
入浴時、あるいは出浴後短時間に起こる血液の変化は血液の濃縮によるものです。血液は液体(けっしょう)の部分と血球の部分から成り立っており、2つのバランスは液体の部分が5.5の割合に対して血球の部分が4.5の割合でこうせいされています。入浴によって体内の水分は汗や尿として体外へ出ていきます。その結果、血液の液体部分〔血漿〕が減少して血液の濃縮が起こります。この血液の濃縮は、血液の粘り(血液粘度)をぞうかさせ、特に動脈硬化の進展した高齢者の方では、血管の内側が狭いために血液の流れを悪くする結果となります。
また、温められた血液は粘度が上がります。温浴によって真皮を流れる血液がまず温められます。温められた血液は脳中枢部にある温熱中枢にはたらき、この中枢からは体温維持のための防御機構、すなわち発汗や呼吸増加の指令が出されて、体外への熱の拡散が盛んに行われるような反応が起こります。
このような生理的反応は血液中の水分の減少を引き起こします。その結果、血液の凝縮が起きて、血液濃度の上昇が起こりますので水分補給が必要です。
■42℃以上の温浴は血栓を作る■
温浴によって血液が温められると、血液中にある血栓を溶かす作用をもったプラスミンが増加します。この作用は浴温度で違った変化を示してきます。
40℃前後の温浴ではこの活性が亢進していきますが、42℃を越えると逆に活性が低下していきます。また、高温浴後には血小板の機能も更新すると血栓形成が起こりやすくなります。このように42℃以上の入浴は血液性状の変化から見て、血栓形成の方向に血液を追いやるようです。
ちなみに、入浴中あるいは浴後の出血は止まりにくくなります。これは温熱によって血管が拡張した為に止血に時間がかかるので、血液が凝固しにくくなったわけではありません。出血の認められる際は出血した部位を圧迫してください。